直接展望レポート ライト版 メーカー

「予防」という差別化を、業界の必然に変える一手

先んじて「予防」を掲げてきたエネル様のこれまでの歩みと、ヘアケア業界がこれから迎える変化を重ね合わせ、今後の打ち手の方向性を整理しました。

エネル株式会社様向け / 作成日:2026年7月8日

01 / 現在地

①現在地

エネル様は「傷んでから直すのではなく、そもそも傷ませない」という一貫した思想のもと、美容室向けのシステムトリートメント(エネルシステム)と、ご家庭向けのケアライン(18organic Reverse care、Cojin)を両輪で展開されています。他社の多くが「ダメージへの対処」を語る中で、エネル様は施術前の段階、つまり髪が傷む前の状態そのものに焦点を当てている点が、一貫した独自性になっています。

「エネルってよく前処理が全てだという言い方をするじゃない、文字通りなんですよ」

この思想は、すでに数字として裏付けを持ち始めています。札幌の提携サロン・CuCuLa様では、エネル様の予防思想を導入したことで、次のような変化が実際に起きています。

CuCuLa様における導入後の変化(エネル様公開資料・社内実績データより)
変化内容
人員体制スタッフ6名(2023年)→5名(2024年3月〜)→4名(2026年〜)体制でも、売上は維持
単価カット以外のエネル関連メニューを10%値上げしても、大きな客離れは起きず
提案力「1万円のメニューでは無理」と感じていたスタッフが、2万円のメニューを提案できるように
売上実績スタッフ体制の縮小(6名→4名)により客数は2023年上半期→2026年上半期で約23%減ったが、値上げによる離反ではなく(失客率は1〜2%と低水準)、客単価が7,922円→11,802円に上昇したことで、2026年上半期の売上は過去最高を記録

一方で、現在地にはあわせて2つの課題も見えています。ひとつは「予防」という言葉自体の伝わりにくさです。ダメージへの対処であれば効果を実感しやすい一方、予防は「何も起きなかったこと」が成果であるため、価値が伝わるまでに時間と説明の工夫を要します。もうひとつは販売チャネルの構成変化です。

チャネル別売上の推移(エネル様社内資料より・単位:円)
チャネル2023年2024年2025年
美容室(エネルシステム)35,898,95538,567,89536,217,243
CuCuLa系(EC・エステ店販)10,627,9979,449,6018,266,061
ALL MY TEA(低単価リテール)6,493,7907,260,6168,971,943

美容室チャネルは2024年をピークにやや落ち着き、EC・エステ店販は2年連続で縮小している一方、低単価のリテール商品は着実に伸びています。ここでの「美容室チャネル」はエネル様全体の受注ベースの集計であり、CuCuLa様のように個別サロンの売上そのものが伸びているケースと矛盾するものではありません。「本業(施術提案)」「サロン発の高単価ケア」「日常的に手に取りやすい低単価商品」という3つのチャネルの重心が、静かに移動し始めているのが現在地です。

02 / 業界の未来

②業界の未来

ヘアケア業界の未来シナリオを見渡すと、エネル様が先行して取り組んできた「予防」という方向性は、決して特殊な一社の思想にとどまらず、業界全体が今後たどる可能性の高い道筋のひとつとして位置づけられます。

標準シナリオ見通し 人口減少・淘汰が緩やかに進む「現在の延長」の中で、2040年代にかけて業界全体が「維持・予防の美容」へ軸足を移す。次世代の基幹メニューとして「予防型」の空席が2027〜2032年頃に生まれるという戦略仮説も、この延長線上にある。
順風シナリオ見通し 輸出・インバウンド・越境ECで外需が国内縮小を上回る。「予防」を日本発のヘアケア哲学として海外へ展開できれば、国内市場の縮小を補うだけでなく、CMC・18-MEAという科学的な裏付けが海外での差別化材料になる可能性がある。
逆風シナリオ見通し AIパーソナライズ×D2C直販が流通構造を解体する。サロン経由の店販(CuCuLa系)が縮小し、低単価の直接リテール(ALL MY TEA)が伸びているという現在の兆候は、この解体の初期段階と重なる可能性がある。

特に注目したいのは、標準シナリオの延長にある「次世代の基幹メニュー枠」です。業界の戦略分析では、この枠の有力候補のひとつとして「予防型」が名指しされている一方、同時に「効果実感が遅く、見える化が必須条件になる」という弱点も明記されています。これは裏を返せば、見える化の仕組みを先に持っている企業ほど、この枠を取りに行きやすいということでもあります。

⚠️ 見通し情報についての注記 このセクションの記述は、業界の複数シナリオに基づく見通しであり、確定した情報ではありません。「見通し」ラベルが付いている箇所は、今後の動向次第で変わりうる前提でお読みください。

03 / 理想の未来像

③理想の未来像

CuCuLa様で起きた変化、すなわち「値上げしても大きな客離れが起きない」「スタッフが自信を持って高単価メニューを提案できる」という状態が、一店舗の成功事例にとどまらず、エネル様と関わりを持つサロン全体で再現されている。それが、このレポートで描く理想の未来像です。

そのとき「予防」は、抽象的な思想としてではなく、車の定期点検のように「効果が見える形で、定期的に確認できる仕組み」として、サロンとお客様の間で共有されています。予防の価値は「何も起きなかったこと」ではなく、「点検のたびに、髪の状態が数値やビフォーアフターで確認できること」に置き換わっています。エネル様は、この「予防を見える化する仕組み」を最初に体系化した企業として、次世代の基幹メニュー枠の定義そのものに関わる立ち位置を得ています。

⚠️ 見通しに基づく記述です 「次世代の基幹メニュー枠」を含むこの理想像は、②でご紹介した業界シナリオの見通しをもとに描いています。確定した未来ではなく、実現に向けて動く価値があると判断した仮説です。

04 / 今やること

④今やること

  1. 「予防の見える化」指標をつくる 業界側も指摘する「予防は効果実感が遅い」という弱点への対策が、最優先です。CuCuLa様で実際に起きた変化(単価・提案力・客数減少下での売上成長)を、他のサロンにも当てはめられる「予防効果を測る物差し」として整理します。ここが遅れると、見える化の手段を先に持った他社に、次世代メニュー枠の定義権を先に取られるリスクがあります(この「次世代メニュー枠」自体が②の業界シナリオに基づく見通しです)。
  2. CuCuLa様の事例を「型」に変える CuCuLa様への導入プロセスは、ロールプレイでも個別指導でもなく「思想を確認する場」と「講習会の継続開催」というシンプルな2つの取り組みでした。この再現性の高さを言語化し、次のサロンへ展開できる提案素材として準備します。
  3. チャネル構成の重心移動を前提にした再設計 低単価リテール(ALL MY TEA系)が着実に伸びている一方、EC・エステ店販(CuCuLa系)が縮小傾向にあります。この変化を一時的な波と捉えず、「本業の施術提案」「サロン発の高単価ケア」「日常的な低単価接点」という3チャネルの役割分担を、次の中期計画のタイミングで見直す価値があります。
⚠️ 見通しに基づく記述です 1番目の項目にある「次世代メニュー枠の定義権」というリスクは、②でご紹介した業界シナリオの見通しに基づく仮説です。確定した競合動向ではありません。

出典

出典一覧

ここから先、「予防の見える化」指標の具体的な設計や、シナリオが外れた場合の代替プランまで詰めていく場合は、フル版でご案内できます。